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格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略
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政治的すぎ
クルーグマンがどんどん政治的になって、とうとうついていきにくくなってきました。アメリカ経済がどん底の90年はじめ頃に、ヴェンチャー企業を中心にアメリカ経済が復活することを見事に的中した頃が懐かしい。ノーベル賞をとったからといっても、僕は、高い評価をする気になりません。
格差問題の本質的な原因
格差は重要な社会問題として既に深刻に受け止められている。本書の斬新な点は、格差の原因が技術の進歩やグローバリゼーションではない別なところにあると指摘している点にある。
それにしても、クルーグマンの舌鋒は鋭い。こんなこと書いて大丈夫か?と、読んでいてちょっと心配になるくらい、アメリカ社会の筋金入りの保守層に対して切り込んでいる。人種の問題に関しても遠慮はない。
おそらく、この本を読みながら多くの人が考えたであろうことを、私も考えさせられた。すなわち、
・大恐慌x第二次世界xルーズベルト→中産階級の発展を生んだ政策
・サブプライムローン問題xイラク戦争xオバマ→??どうなる??
である。
一方、本書から整理すると、今のアメリカの格差をもたらした直接的な原因は大きくわけて以下の2つである。
・所得の再配分を弱めた政治(税の累進化軽減、社会福祉プログラム削減等)
・給与の2局化(CEOの高額報酬など)
このうち、後者については、今の景気減退による企業業績の悪化によって急速に批判が高まっているので、今後多少是正される可能性はあるかもしれない。一方、前者についてはどうか。著者が訴える「節度」「道義」は重要な要素だと思うが、ここが今後一番注目されるところだろう。また、この前者については、今の日本の政治にも共通していえることである。
いずれにせよ、社会においてもっとも重要な問題のひとつに対して、読者にいろいろなことを考えさせる、あるいは考えるということを誘発する、という点で良書だと思われる。格差はアメリカだけの問題ではないのだから。
訳者が割愛したという、米国社会の法律・制度、政治事情、風俗の詳細部分についても、私は読んでみたかった。
経済格差は、グローバル経済化が理由ではない
「グローバル経済化が経済格差の原因」のように、言われている。
しかし、実際はそうではなく、政府の政策による。
「経済学」はいかにもうけるかを考える学問
「政治学」は、いかに儲けを配分するかを考える学問
アメリカは、所得税を最高税率70%程度から、30%程度に下げた。
国民医療保険制度は、「高所得者から、税金を取り、低所得者に配分するシステム」として、
アメリカでは、いまだに導入されていない。
日本でも、所得税の最高税率は下げ続けられた(今は、40%だったはず)。もうけても、株の儲けにかかる税額は一律10%(優遇中)。
経済格差は「経済」の問題ではなく、「政治」の問題である。
好著。『貧困大国アメリカ』と同時に読むと、全体像が理解できる。
政治のイニシアチブによる格差
ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者による著作。
クルーグマンの著書を読んだことがなかったのでとりあえずこの本から読んでみた。読んでみるとなるほど、この時期にノーベル賞に選ばれる人だと思えた。
タイトルどおり、筆者はアメリカの格差が作られたもので、それは1980年代以降の話としている。また、人種差別と格差経済の関係性のなかで右派ムーブメントの台頭を論じており、興味深い。
私は、大恐慌、ニューディール政策、WW2、ベトナム戦争、新自由主義の台頭、レガノミクスというおおまかな歴史の背景である経済を、ニューディール後は戦費増大で経済が行き詰まり、そこに新自由主義が台頭した、、。と解釈していた。
クルーグマンはこの新自由主義の台頭を説明するのに、経済の変化があってそれに対応すべく政治が動くという固定観念をくつがえしている。
つまり、先に政治的ムーブメントがあって経済政策を動かし、現在の「格差」という経済状況が「つくられた」と主張している。
大多数の有権者にとり不利な主張をする集団や政策が「政治」のイニシアチブで台頭したということは大きな矛盾を孕んでいる。「政治」が民主主義により運営されている以上、大多数の有権者の不利な政策が通るはずがないのである。
これを見事に説明していることが本書の秀逸な点である。
右派ムーブメントの起源とその戦略の柱である、「白人層の不満・不安」と「共産主義に対する被害妄想」を刺激することがあげられ、その台頭の歴史を詳細に解説している。
また、「民主主義」に関しても選挙制度やマスコミの問題を挙げて、いかに民意が反映されないかを指摘している。
今日の経済学の潮目の変化を象徴する、お薦めの一冊です。
しかし、散々、新自由主義・シカゴ学派を持ち上げておいて、新自由主義経済政策が行き詰まるとこれに批判的な経済学者を評価するノーベル経済学賞ってどうよ。
なぜアメリカはこんな酷い国になってしまったのか
各種統計データを示しながら、いかにアメリカの格差が拡大してきたか、その理由は何か、ということを深掘りしています。
ニューディール政策と第二次世界大戦の戦時統制の影響で、戦後のアメリカ社会は、貧富の差が少ない社会を築くことができました。しかし、著者によれば、レーガン大統領の登場あたりから政治は一部の富裕層が牛耳るようになり、格差は拡大していきました。
貧困層が政治的に力を持たないよう、「保守派ムーブメント」は移民に選挙権を与えないように画策し、さまざまな方策で低所得者の投票率を上げないように工夫しています。
法律的に違法とはいえなくても、人道的とはいえない「保守派ムーブメント」の行動の根底にあるものは何なのか。
著者のクルーグマンは、
「すべての根源は、アメリカの人種差別問題にある」
と結論しています。
貧しい白人を救う政策を実行すれば、貧しい黒人やヒスパニックも一緒に救ってしまう。黒人やヒスパニックを救済するくらいなら、貧しい白人を放置しておくほうが良い。口に出して言わないまでも、多くの白人の根強い人種差別意識が格差を縮めることを拒否している、というのがクルーグマンの主張です。
クルーグマンはアメリカの暗い時代は変わろうとしている、といいます。
アメリカでは白人の人口がが減少し、多くの白人の意識が人種差別的でなくなってきた、という彼の洞察が事実なら、アメリカ社会は「格差が縮小する」という大きな転換点を迎えることでしょう。
折しも、アメリカはもうすぐ大統領選挙。私がアメリカ人だったら、本書を読んだからには、迷わずオバマに投票するでしょう。
アメリカをこんなに酷い国にしてしまったのは「保守派ムーブメント」に支配された共和党のせいなのか。そして、その政治的支配は、転換点を迎えようとしているのか。
答えが出るのは、もうすぐです。
早川書房
暴走する資本主義 グローバル経済を動かす愚かな人々 嘘つき大統領のデタラメ経済 世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃 The Return of Depression Economics
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